経営学の系譜⑤

応用経営学

マーケティング

 マーケティングとは、販売管理のことであり、適正利潤を維持しつつ、顧客満足を満たすために商品またはサービスの提供を効果的におこない、顧客志向の視点から組織全体を市場のニーズに適合させることを意味します。
 また、E.J.マッカーシーは、マーケティングの成功のためには、製品(Product)、価格(Price)、流通経路(Place)、プロモーション(Promotion)のいわゆる4Pを対象市場に適合するように最適に組み合わせるマーケティング・ミックスの重要性を唱えました。似た用語にプロダクト・ミックスというものがあります。プロダクト・ミックスとは、企業が生産・販売する各種商品を市場の特性にあわせて組み合わせることを意味します。
 マーケティングはプロダクト・マネジャーによって適切に計画・管理されます。顧客ニーズを満足させるため新製品の企画、仕入から販売、在庫管理に至るまで担当製品に関するすべての責任を持つことになります。このように、企業のマーケティング目標を実現するために、製品やサービスを最適な場所、時期、価格、数量で市場に提供するための計画と管理のことをマーチャンダイジングと呼びます。

マーケティング戦略

(1)製品差別化戦略(市場集合戦略)と市場細分化戦略

 マーケティング戦略の展開にあたり、その前提となるマーケティングの基本的な考え方には製品差別化戦略と市場細分化戦略があります。

 製品差別化戦略・・・製品差別化戦略は、大量生産・大量消費という生産者側の論理を背景とした戦略で、生産者志向的な戦略です。価格以外の製品の属性、製品のデザインや機能、アフターサービスなどによって自社製品を他社製品から差別化し、自社のブランドを浸透させるための広告宣伝などのマーケティングをおこなう戦略です。
 市場細分化戦略・・・市場細分化戦略は、顧客の趣味嗜好を中心に考える消費者志向的な戦略であり、顧客の需要の多様性や異質性を考慮し、顧客・市場を年齢、所得、性別、ライフスタイル、地域別などの基準によってグループ化し、それぞれの細分化された市場特性に適した手段を用いることで顧客層の欲求をより満たすような製品開発、広告宣伝などのマーケティングをおこなう戦略です。ジェンダーが意識される現代社会において、以前にも増して重要視されています。

 (2)価格戦略

 価格戦略とは、自社製品の置かれている状況にあわせて価格を決定する戦略です。

 ①スキミング・プライシング(上澄み吸収価格戦略)・・・新製品の導入期において高価格を設定する戦略です。高価格を設定することにより製品の高級感をイメージすることができるため、高所得層や新しいものを好む顧客層をターゲットにする場合に適しており、製品の目新しさなど高価格に値する高付加価値製品であることが前提となります。経験曲線に沿ってコストが低下していくのにあわせて徐々に価格を低下させ、多くの見込み顧客に普及させることを目指すように移行します。
 ②ペネトレーション・プライシング(浸透価格戦略)・・・新製品の導入期にあえて低価格の値段を設定する戦略です。低価格を設定することで、すべての所得層の顧客を引きつけ、多くのマーケットシェアを獲得することを目的としています。製品ライフサイクルが導入期でも競争が激しいような場合に適しています。新製品の導入期で累積生産量が少なく、製造コストが高い時期にあえて当初の赤字を覚悟して低い価格を設定することがあります。市場の需要を一気に引きつけ、累積生産量を一気に増やすことができます。経験曲線が他社に先行して下落することになるため、低コストの実現を可能にし、初期の赤字を補填する利益を得ることができると考えられます。

(3)流通戦略

 流通経路戦略とは、製品の物流、場所、地域、移動手段などに関する決定のことです。

(1)最寄り品・・・消費者が日常的に頻繁に購入する商品のこと。単価の低い日用品や雑貨、食料品などが該当します。大量の商品を広範囲に流通させる必要があるため、多様なチャネルを活用する開放的チャネル戦略を適用します。
(2)買回り品・・・価格や品質、デザインなどを比較するために複数の店舗やキュレーションサイトなどを参考に購入する商品のこと。家電製品などの耐久消費財、衣料品、家具などの商品です。最寄り品に比べ、購入の頻度が下がるため、選択的チャネル戦略が適用します。
(3)専門品・・・消費者が高価格を受け入れる可能性の高い商品のこと。高級ブランドや専門性の高い商品などが該当します。専門品は厳しい商品管理、販売員の豊富な商品知識、アフターサービスの充実などが求められる商品で、厳選された特定の販路に絞った専売的(排他的)チャネル戦略をとることになります。

(4)プロモーション戦略

 新聞や雑誌、テレビなどのマスメディアを通じたコミュニケーションである広告、見込み客に対する口頭での対面的なコミュニケーションである対面販売、広告料なしで製品を各種メディアに取り上げてもらうように働きかける広報(パブリシティ)などがあります。
 プロモーションの最適な組み合わせや選択については、次の2つが代表的です。

(1)プル戦略・・・消費者に対して、自社製品の広告宣伝を積極的におこなうことにより、消費者の購買意欲を刺激して、自社製品を販売している店舗に消費者の足を向かわせ、それを買わせるという戦略です。店舗に引っ張ってくるという意味でプル戦略と呼ばれます。知名度の高いブランドで選好されやすい製品に向いていると言われます。
(2)プッシュ戦略・・・営業員などによる訪問販売などの販売促進などによって、自社製品を消費者に向かって積極的に売り込んでいく戦略のことです。一般的に知名度の低い製品や差別化の難しい製品を販売する際に有効と考えられます。

 

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